民主主義とその周辺

研究者による民主主義についてのエッセー

集団的自衛権の解釈改憲はなぜ問題か?(1)――安倍政治とボナパルティズム――

先月末、日本と北朝鮮の政府間の協議で、拉致問題の進展が見られた。北朝鮮が日本人拉致被害者の再調査を実施し、その見返りに、日本は独自の制裁措置を解除するという内容だ。この突然の出来事と、国内政治の主要な争点となっている集団的自衛権の問題との…

サイレント・プアともう一つの民主主義(2) サイレント・プアを解決するために必要なもう一つの取り組み

先の投稿「サイレント・プアともう一つの民主主義(1)」では、サイレント・プアの問題を現在の日本の社会のあり方から理解する必要性を論じた。このあり方を大きな影響を及ぼしているのが、グローバリゼイションの圧力の下で弛まず進められている新自由主義的…

サイレント・プアともう一つの民主主義(1) サイレント・プアとは何か?

サイレント・プアが提起する民主主義の問題 NHKの「サイレント・プア」というドラマがなかなか面白いという噂を耳にしたので、これまでに放映された第1話から第3話を観てみた。弟の死の責任を背負い苦悩している若き女性が、社会福祉協議会のコミュニティ・…

マイルドヤンキーと民主主義――孤独なコミュニティの不安――

《マイルドヤンキーという新保守層》 近頃、マイルドヤンキーという言葉をよく目にする。この言葉は、マイルド、すなわち、尖った部分がそぎ落とされてやさしくなったヤンキーを意味するらしい。ヤンキーといえば、反社会的な行動を取り、ときに恐喝や万引き…

大阪市長選挙と民主主義の隘路――代表制民主主義における選挙の形骸化――

《選挙結果の評価》 2014年3月23日の出直し大阪市長選は、事前の予想通り、低い投票率(23.59%)と橋下氏の圧倒的な得票(87.5%)による再選で終わった。この結果で注目された点は、極端に低い投票率だけでなく、13.53%という異常な数の無効票(6万7506票、その…

「ネット右翼と民主主義」(2) ――「Japanese Only」から民主主義への怨念へ――

「Japanese Only」、ありていに訳せば、「日本人以外、お断り」。この言葉が書き込まれた横断幕が、Jリーグ第2節浦和レッズ対鳥栖戦の際、浦和サポーターが入場するゲートに掲げられた。この事件は、大きな話題となっている。その横断幕における「日本人以外…

「ネット右翼と民主主義」(1) ――ネット右翼と「反知性主義」――

おそらく、ネット右翼、あるいはネトウヨという言葉を一度は耳にしたことがあるだろう。それは、在日朝鮮人を主要な標的として極端な排外主義的ナショナリズムを主張する極右集団である。ネット右翼という言葉から分かるように、その特徴は、ネットと中心と…

「2014年都知事選から日本の民主主義のこれからについて考える」(2)ーー反復の中から出現しつつある民主主義の新たな徴候ーー

今回の都知事選の結果が示していることは何であったのか。それは、これまで何度も目にした事態が今回もただ反復されたに過ぎない、ということである。そしてこの反復がなぜ生じるのか。それは、代表制民主主義が正常に機能しているためである。これらのこと…

「2014年都知事選から日本の民主主義のこれからについて考える」(1)ーー民主主義における反復とその切断についてーー

今回の都知事選は、400万票も獲得した前知事の就任1年程での辞職に始まり、総理経験者の出馬やネトウヨと呼ばれる極右勢力に支持された候補者の登場など話題には尽きなかった。しかし、結局、予想された通りの結果で幕を閉じた。この結果については、予想さ…