民主主義とその周辺

研究者による民主主義についてのエッセー

2015-01-01から1年間の記事一覧

民主主義がテロに屈しないためにこそ、寛容が必要である――11月14日のパリにおけるテロ事件の衝撃について――

11月14日、イスラム過激派組織によるパリでのテロは、文字どおり世界を震撼させることになった。もちろん、その衝撃はその犠牲者の数やパリを標的にした周到な計画に起因するだろうが、それだけではない。このテロが起こるべくして起きた事件であったこと、…

安全保障関連法が成立した夜に、日本の民主主義に起こったこと――冷たい怪物が再び蘇った日――

集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法が9月19日の未明に成立してから、もう一週間が過ぎようとしている。それを受けて胸をなでおろしている人もいれば、憤り落胆している人もいるだろう。あるいは、たかだか一つの法律にいったい何を大騒ぎしていた…

いま、デモを擁護しなければならない、いくつかの理由について

この期に及んでも頻発するデモ 現在、参議院では、9月中の安全保障関連法案の成立に向けて、審議が進んでいる。衆議院ですでに可決された本法案は参議院での賛成多数で成立するので、与党議員が過半数を占める以上、採決にこぎつきさえすれば、この法案は正…

なぜ、自民党若手議員の発言を見過ごすことができないのか――極端化する時代の代表制民主主義――

自民党内で一連の動向 安全保障関連法案の今国会での成立や、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設問題、TPPの締結など多くの難題を抱えた安倍政権は、このところ、その身内によって足を引っ張られているようだ。もちろん、念頭にあるのは、6月25日の「文…

民主主義が民主主義に敗北した日――安全保障関連法案の衆議院通過の意味について考える――

7月16日以後の日本社会 先日の安全保障関連法案の衆議院での可決は、第二次世界大戦後、民主国家として出発した日本を大きく転換させることになった。2015年7月16日を挟んで、それ以前の日本とそれ以後の日本は、まったく異質な社会となったのだ。なぜなら、…

「国家の存続か、憲法か」という問いかけが意味すること――安全保障関連法案の第3の局面における争点を理解するために――

安全保障関連法案の第3の局面 安全保障関連法案の国会での審議は難航しているようだ。最近の世論調査を見る限り、この法案に対する国民の理解は深まっているとはいえず、その反応は、慎重なままのようだ。安倍政権は、今後、世論の軟化を図ることになるので…

安全保障関連法案の前に再び現れた民主主義の亡霊

憲法審査会の参考人質疑が明確化にした安全保障関連法案の問題の焦点 先日行われた、衆議院憲法審査会の参考人質疑が話題を集めているようだ。与党の推薦した憲法学の専門家を含めた出席者全員が、現在国会で審議されている安全保障関連法案が現行憲法に違反…

民主主義はそんなに「すばらしい政治体制」なのか?――大阪都構想をめぐる住民投票から考える直接民主制の問題――

民主主義はすばらしい? 一昨日、多くの注目を集めた大阪都構想をめぐる住民投票が行われ、即日、開票結果が明らかになった。すでに報道にあるとおり、大阪市民は約1万票の差で、橋下大阪市長が提案した大阪都構想の受け入れを拒否することになった。 大阪市…

代表制民主主義は生き残ることができるのか?――2015年統一地方選挙から再考する代表制と民主主義の関係――

先日の憲法記念日には、現行の日本国憲法に対して、改憲派と護憲派双方による活発な発言が相次いだ。そのうち最も注目すべきは憲法改正の中心的勢力である自民党の動きである。自民党の船田元・憲法改正推進本部長によれば、自民党はまず「緊急事態条項」を…

テロ、例外状況、民主主義――イスラム国による日本人人質事件が提起する、民主主義における暴力の問題――

最悪の結果 いわゆるイスラム国(ISISあるいはISIL)による、日本人二名の人質事件は、日本社会に大きな衝撃をもたらしている。報道によれば、そのうちの一人はすでに殺害され、もう一人のジャーナリストも、昨日、その命をテロリストの手によって奪わることに…

シャルリ―・エブド社銃撃事件と、自由(liberté)、平等(égalité)、博愛(fraternité)――“Je suis Charlie”への違和感から考える民主主義の危機――

“Je suis Charlie”への違和感 イスラム原理主義者による、フランスの出版社シャルリ―・エブド銃撃事件の戦慄が冷めやらぬ先の日曜日(1月11日)、このテロリズムに抗議するデモがフランス全土で行われた。報道によれば、その数は、370万人にも及び、デモ大国フ…